「ムーアの法則」の限界が近づいてきた?

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PC基盤
引用:足成

皆さんこんにちは、Hiloyan(@HiloyanHiloker)です。Natureにムーアの法則の限界が近づいてきているって話が出ていたので、取り上げてみようと思います。

The chips are down for Moore’s law : Nature News & Comment
The chips are down for Moore’s law …

ムーアの法則って?

ムーアの法則というのは、半導体のチップはおよそ2年ごとに倍の集積度をもつということです。

ムーアの法則の50年と題してIntelのホームページにこんなビデオがありました。

50年にもわたって、飛躍的に集積度を高めてきたという事実は他に類を見ず、ある意味での奇跡なのかなって思いまます。僕が子供のときに流行っていた「ファミコン」やZ80などの8ビットPCと比較していまのPCの性能は全く別次元になっているのを肌で感じます。

Intelのこのページでは、経済、技術、社会に多大な影響、変化を与えてきたこと、これからもこういった取り組みは続くだろうということが書かれていました。

ムーアの法則通りには進化することが難しい理由

記事では、ムーアの法則は間もなく今までのようにはいかなくなる(=限界が来る)ので、半導体産業はこれを断念するだろうということでした。一つは技術的な問題(熱や小型化等の問題)、もう一方はコンピュータのモバイル化によるニーズの変化です。

技術的な問題について

技術的な問題としては、大きく、熱の問題と小型化の限界が挙げられます。

熱の問題

限界に来る理由の1つは熱の問題です。小さな回路の上にぎゅうぎゅうと押し込められた回路が発する熱が問題を引き起こすということです。

小型化した回路の中を高速の電子が移動することで熱が出るのですが、動作を高速にしようとするとどうしても熱が大きくなってしまいます。そのため、2000年を過ぎたあたりから発熱の問題が顕著になってきていました。

この問題に対して、半導体メーカーは回路の動作速度をあげることによる高速化を2004年以降、やめています。その代わり、チップ上に複数のプロセッサを作る(マルチコア化)することによってこの問題を解決しようとしています。

一方、複数のプロセッサを載せることによって、処理の分担をすることが難しくなっているという問題が出てきています。

これはいいかえると、たくさんの仕事をさばくためにいままでは、1人の担当にうまくできるように仕事を教えていた(=高速化)していたのですが、到底さばけないので何人かで分担(=マルチコア化)することにしました。ところがチームで作業をするためには作業の分担や、担当間での調整が必要になるので、効率よく仕事をすることが難しくなるということでしょうか。

回路の小型化の限界

もうひとつは、回路の小型化が原子のサイズレベルまで達するのが時間の問題だということです。現在、これらの回路は12nm(ナノメートル、1nmは10億分の1メートル)にまでなっているのですが、どんなに頑張っても、2~3nmの限界よりも小さくすることはできないだろうとしています。

2~3nmになると、原子は10個程度しかない位の大きさになります。これよりも小さくしようとすると不確定性に支配されてしまうため、使い物になるものが作れないというものです。不確実性っていうのは簡単に言うと小さくなればなるほど、その挙動を正しく把握することが出来ないことです。

たとえて言えば、統計的にデータの数(=母集団)が多いとある程度の傾向がわかるのですが、10人くらいで統計をとっても個人に支配される割合が大きくなるので、統計的な把握は出来ないということになるのでしょうか・・。

詳しくは「不確定性原理」を見ていただければと思います。

こんな理由から、2020年ごろには今までのシリコンによる回路をベースにした技術には、限界が来るだろうということです。

これ技術的な問題に対する今後の動向

こういった問題を打破するために今後必要になってくることについてですが、脳のような処理形態をまねすることや、シリコンによる半導体回路に代わる新しいスイッチング可能な素材を見つけることと、回路を立体的にすることが考えられると話しています。ただ、これらの策も課題は多そうです。

脳の処理形態のような新しいパラダイム

脳のような新しいパラダイムを受け入れることで処理能力を上げることが出来ないかをという点については、研究所からは思ったほどには支持されていないようです。研究者は今までのコンピュータ上で動作するアプリケーションのタスクをより多く処理できるようなものを提供する方が価値を持っていると考えているようです。

新しい素材の探索

新しい素材として“ミリボルトスイッチ”を探すという取り組みがあります。“ミリボルトスイッチ”とは、従来のシリコンベースの回路よりもはるかに熱を出さない回路のことです。また、電子のスピンの方向によって計算につかうような方法なども研究されています。

ところがセミコンダクターリサーチ(SRC)社のナノ電子工学イニシアチブを指揮する物理学者のThomas Theis氏によると、いろいろな可能性はあるものの物理学の可能性を試しきる前に資金を使い果たすだろうと考えています。そうした判断によって、“ミリボルトスイッチ”は日の目を見ることはありませんでした。

立体的な回路の構築

よくおこなわれるアプローチとしては、立体的な回路を作成することです。回路を三次元に設計することで回路をコンパクトにできる可能性があります。

しかし、この現在立体的に回路を構成するような技術が役立つのは熱問題が起きにくいメモリチップで使われています。メモリは、値を書き換えるときにのみ動作するため、熱問題が起きにくいということです。他方、プロセッサのように常に動作しているものを積み重ねて立体化すると更に大きな熱を発生することになります。

考え方を変えてメモリと離れたところにあるプロセッサを重ねることで高速化出来ないかということが考えられています。ただし、メモリとプロセッサの作成方法はだいぶ異なることからこれを重ねて作ることには少なからず課題があるようです。

スタンフォード大学の電子工学エンジニアのSubhasish Mitra氏は、カーボン・ナノチューブを使ってプロセッサとメモリーを立体的に構築することに成功しました。彼らはこれによって必要な電力を1000分の1以下にすることが出来ると考えています。

モバイル化の推進

ムーアの法則の2番目の障害はちょっと驚きですが、コンピュータがのモバイル化とともにやってきました。

それは、今日扱われているようなモバイル機器にとって必要なものは、今までのPCとは異なるニーズを持っているということです。モバイル機器にとって上で動作するアプリケーションやデータはデータセンターで動くようになったことによって、ムーアの法則を維持することは高いニーズをもたなくなりました。

サーバを提供するデータセンターは、ムーアの法則に従う最先端のマイクロプロセッサの市場を占めており、GoogleやAmazonなどの意向をIntelの意思決定にも影響を与えるほどだということだそうです。

一方モバイル利用においては、バッテリーで長時間動作することが重要になってきています。また、携帯電話においては、タッチや、近接、加速度、および磁気を検出するために、音声コール、Bluetooth、Wi-Fi対応、GPS、最近では指紋の判別などが利用できなければなりません。

これらの機能が使えたとしても、バッテリーを消費しないような電力管理が出来るようなデバイスでなければならなくなりました。そしてこの特殊化は、いままでムーアの法則を守り続けてきた半導体メーカーの開発サイクルには則していません。

「今までの市場では、少ない種類のものを大量に供給すればよかった」とアイオワ大学のコンピュータ科学者であるDaniel Reed氏は言います。「新しい市場では、数10万単位で多くの種類のものを作ることが求められます。そのためには、安価に設計、製造できるようなものがよいのです。」

これらを両立するチャレンジは進行中です。

一つの機種に異なる機能をもったものを協調動作させることはよく悪夢に感じられるとこの件に関する新しいロードマップのコミュニティをひきいるBottoms氏はいいます。

「異なったコンポーネント、異なった材料、エレクトロニクス、光工学などを同じパッケージ上に実装することは、新しいアーキテクチャ、シュミレーション技術、スイッチ、そしてさらに多くの解決すべき課題を持っています。」

そうした中で、カリフォルニア大学バークレー校の電気工学のエンジニアである Alberto Sangiovanni-Vincentellitと彼の同僚はそれを変えようとしています。それは、一から設計を始めるのではなく、レゴブロックを組み合わせて回路を作るように、あるまとまった機能を持つ電気回路を組み合わせて新しい装置を作成するということです。

ブロックが正しく機能することをテストすることは、チャレンジです。しかし「古いやり方で設計をしようとしたらコストが膨大になるでしょう」

コストの問題をチップメーカーは気にしています。「ムーアの法則の終焉は技術的な課題ではなく、経済的な問題です。」とBottoms氏はいいます。

Intelのような会社はいまだにコンポーネントの小型化に取り組んでいます。しかし「回路を小型化しようとするといっそう多くのコストがかかります。」

大きさを半減するといつも製造業者は全く新しい新世代の、正確な写真平板マシンが必要になります。新しい回路を製造することは何10億ドルもかけた投資が出来るようなほんの一握りの会社にとって必要なことです。

そしてモバイル機器によって引き起こされたマーケットの分れる(少量多品種への流れ)は投資した費用の回収を難しくしています。

「トランジスタあたりのコストが既存のコストを超えるとすぐに規模の拡大は終わるでしょう」とBottoms氏はいいます。

多くの人が産業界はその時が近づいていると感じています。

これまでの10年間にわたり、コストの上昇が半導体チップ製造産業の業界再編を強いたのは事実です。世界の生産ラインの大部分が、Intel、Samsung、および台湾の新竹市にあるTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(TMSC)のような一握りの多国籍企業が所持しています。

これらの製造大手は、すでに原材料とその製造危機メーカーとは密接な関係を持っており、(ムーアの法則にあるような)ロードマップがそれほど有用とは思っていません。

昨年の7月に着手されたホワイトハウスの国家戦略上のコンピューティングイニシアチブは、9月に説明された概略の中で3つの重要な取り組み課題を示しています。

それは、エネルギー効率、接続性、そして安全性です。

周囲の熱や振動等のエネルギーを使ってバッテリーなしで動作するIoT機器のために必要なエネルギー効率、数10億のデバイスがクラウドとの通信をするために必要な莫大なデータ送受信のニーズにこたえるために必要なテラヘルツ帯の通信、サイバー攻撃やデータの盗難に対する予防のために、新しい技術の研究が必要されています。

結局どういうことなのか?

ということで、記事の中ではIntelのアドバンストマイクロプロセッサリサーチ研究所の所長のShekhar Borkar氏の話を引用しています。

それによると、ムーアの法則はトランジスタ数の増大が継続不可能という意味では終わってしまいます。しかし消費者にとっては、価値が2年ごとに2倍になるでしょう。そういう意味において、ムーアの法則は、産業界が新しい機能を持ったこれらの装置を集積出来る限りは続くでしょう。

そしてBorkarは続けます。

「我々の仕事はこれらを設計することです。」

(参考)

「ムーアの法則」の終焉は何を意味するのか? – GIGAZINE
業界のけん引力:ムーアの法則の 50 年

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